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八代尚宏『シルバー民主主義』(中公新書)

 

  本書は、現代日本が直面しているシルバー民主主義、つまり有権者に占める高齢者の割合が高いことから生じる種々の問題についての概説書である。

 シルバー民主主義は、社会保障制度や企業内慣行において若年者より高齢者を優遇することにより世代間格差を生む。また、借金に依存した日本の社会保障の現状を放置し、政府の借金の累積による将来世代の負担増をもたらしている。さらに、過去の日本の成功に縛られ、経済社会の変化に対応した新しい制度等を導入することに消極的になる。

 本書は、選挙における高齢者の投票率が高く若年層の投票率が低い「シルバー民主主義」に真っ向から警鐘を鳴らす警世の書である。このような本を出版することは、先見の明があると同時にとても勇気のあることである。高齢者の反発や反感を予想しながらもあえて出版に踏み切った勇気に拍手を送りたい。より良い日本のために、我々は考えていかなければならない。