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堀部政男『現代のプライバシー』(岩波新書)

 プライバシーの権利について書いてある本。1980年当時の本だが、現在に通じるような議論がなされている。プライバシーの権利については、消極的に「一人にしておいてもらいたい権利」という側面もあるが、積極的に自己の情報をコントロールする権利の側面もある。本書では、主に後者について詳しく紙面が割かれている。当時、OECDのプライバシーに関する八原則として、収集制限、データの質、目的特定化、使用制限、安全保護措置、公開、個人参加、責任が掲げられていたが、これはそのまま今日の日本の個人情報保護法に生かされている。

 個人情報保護については、今日ではかなり厳しく考えられていて、個人情報の漏洩などがあるとすぐにマスコミ報道となるくらい世間の関心度は高い。その個人情報保護について、20世紀になってからの国際的な議論の流れを整理した本である。当時でもすでに条例レベルでは個人情報保護が図られている自治体もあったようだし、法律の素案も出来上がっていたようである。