1980年に出された本であるが、戦争の問題、戦後社会の問題、滅公奉私の問題、管理社会の問題、安保闘争、水俣病、という戦後の重大トピックについてジャーナリスティックに語っているだけで、それを十分意味づけたり体系化したりという批評の働きはあまり感じられない。
事件が起こった直後に書かれた文章であれば、このようなものでも致し方ないかとも思うが、さすがに80年ごろにこのような本を書いても、もはや周知の事実ばかりであまりインパクトはなかったのではないかと考える。
それでも、戦後の大きな社会の流れ、戦後とはどういう時代だったか、例えば大学の教養課程にいる学生に導入のつもりで読ませるにはちょうど良いのかもしれない。そのような用途で使われるのが一番ふさわしいのだろう。いかにも「新書」らしい、入門・導入の匂いが強くする。ここから更に専門的な本を読んで考えを深めていくのである。