社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

栗原康『超人ナイチンゲール』(医学書院)

 ナイチンゲールについての現代的な視点から見た評伝。ナイチンゲールは、看護という営みを通して、リスクを計算して合理的に生きるという近代的個人を超えている。それは彼女の神秘主義についても言えるし、ケアに身を投じる際、後先顧みずとにかく看護の現場に赴くという態度にも見て取れる。ナイチンゲールは近代的個人を超えた超人なのである。

 本書は、近年のケアの哲学を参照し、また著者自らのアナキズムの視点を加味し、ナイチンゲールの評伝を新たに書き直したものである。語り口は軽快でテンポよく、楽しみながらあっという間に読めてしまう。娯楽的でありながら思想性に満ちていて刺激的である。とてもお薦めの本である。