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橋本努『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』(筑摩選書)

 最近消費におけるミニマリズムが唱えられているが、それが脱資本主義とどう関係するか論じた本。今はポスト近代のさらに先のロスト近代であり、必要最低限のモノで生きていくミニマリズムのライフスタイルを実践する人が増えている。巷では断捨離が流行し、一昔前のように高級なものを消費する人は少なくなっている。それよりも、少なく限られたものを長く使う、余分なものは捨てるライフスタイルが増えている。これは、子や孫の幸せや社会的弱者の救済のためにお金を使い、資本の支配力や集中力を社会的に削ぐ方向性があれば脱資本主義と親和的である。

 確かに、たくさん働きたくさん浪費するワークアンドスペンドサイクルはもう過去のものになっている。人は顕示的消費をしなくなり、それよりも生活をシンプルに、そしてモノよりもコトを大事にするようになっている。そのようなミニマリズムが脱資本主義とどのように接続するか論じた本である。ミニマリズムによっても勤労はするわけであるが、そこで生み出した富を大企業の資本形成に用いるのではなく、自らの子孫や社会的弱者のために使うのが脱資本主義と親和的だとするのが本書である。面白い議論である。