一人一人が訂正する力をもって地道に行動していけば社会は変わるという主張をしている本。訂正する力とは、過去との一貫性を主張しながら、実際には過去の解釈を変え、現実に合わせて変化する力のことを言う。それは、持続する力、聞く力、老いる力、記憶する力、読み替える力でもある。現代日本では、保守リベラル双方にいる「訂正しない勢力」が社会の硬直化を招いている。彼らはブレないことで逆に社会の変化を阻んでいるのである。日本にも訂正する土壌を導入する必要がある。
本書は、主にウィトゲンシュタインの言語ゲーム論に依拠しながら、そもそもゲームとは変化しながらも持続するものだという哲学的な主張に基づき、そこから訂正する力という着想を得ているようだ。一見抽象的とも思える哲学理論から、現実に起こっているダイナミズムを説明し改良するための議論を構築できるというのはさすが東浩紀である。本書のもとになった本も読んでみたい。