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人事の公正性の原則

 我々社員は人事部の言うことはきちんと聞く。なぜなら人事は公正に運営されているという信頼があるからだ。社員の人事は常に公正に運営されなければならない。これが人事の公正性の原則だ。仮に人事が公正に運営されておらず、情実や政治によって不当にゆがめられているとするならば、我々は人事を信用しなくなり、離職したり頻繁に異議申し立てすることになって、組織にとって不利益な事態が生じるであろう。

 だから人事はロジックによって行われなければならない。そこにパッションやポリティクスの入り込む余地を最小限にしなければならない。人事がロジックで行われているのなら、そこには客観性による公正性の担保があり、職員の信頼が寄せられる。それに対してパッションやポリティクスによる不当なゆがみがあると、職員にはもう信頼されない。

 人間と人間の間に信頼関係があるように、組織と社員の間にも信頼関係がある。努力した社員や功績のある社員を正当に評価し、さらなるモチベーションを与えるのが人事の場であって、それにより社員と組織との信頼関係を改めて確認するのだ。努力して実績を上げた職員は、人事上の良い処遇を受けることで組織に一層信頼を寄せる。反対に努力して目に見える実績を上げたにもかかわらず組織から何も見返りがなかったらその職員と組織との信頼関係は悪化するだろう。それは離職や頻繁な異議申し立てにつながっていき、組織の利益が害される結果となる。

 人事部は人事異動のほかにも処分なども行うが、人事が公正に行われていなければ処分についても信頼が失われる。処分を受けた職員は初めから人事部への信頼がないのならば訴訟などで争ってくるであろう。そういったリスクを避けるためにも、人事部は常に客観的なロジックでもって動かなければならないのである。

 人事の公正性の原則とは、人事が客観的なロジックで行われ、そこにパッションやポリティクスが入り込まないことである。それは社員が人事部に寄せる信頼の根拠であり、それが失われたとき組織は深刻な機能不全に陥るであろう。