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組織を下から少しずつ変える

 働いている人ならだれでも経験はあるだろう、誰かが定時に帰ってくれたおかげで自分も躊躇少なく早く帰ることができた、という経験。日本の職場は様々な旧来の慣行によって強く縛られている。その慣行を良い方向に仕向けてくれる人が一人でもいると、他の人も心理的抵抗が少なく時代に合った振る舞いをしやすくなるのである。
 この「定時に帰ってくれる誰か」の存在は大きい。そういう人が一人いるだけで、他の人の残業時間が少しずつ減っていくのである。これは残業だけではない。例えば「有休をすべて消化する誰か」の存在。そういう人が一人いるだけで、他の人は有休がとりやすくなる。
 それで私からの提案は、何か一つの事柄でもいいから先駆的な事例となる一人となれ、ということである。つまり、何かの事柄について「定時に帰ってくれる誰か」のような存在になれ、ということである。職場というものは同調圧力が強く働いている空間である。であるからあこそ、その同調圧力のガス抜きをする存在が必要となるのだ。そういう存在になる勇気を持つということ。そのことによって、周りの人たちは少しずつ時代に合った働き方に向かっていく。そうして、組織の風土は少しずつ現代寄りになっていくのである。
 ちなみに私が行っていることをいくつか挙げてみる。
(1)朝の超勤
 私は朝早く出勤し定時で帰っている。朝の方が仕事が捗るからである。
(2)パワハラの相談
 私はパワハラを受けたときは必ず上の役職の方に相談している。
(3)飲み会の二次会には行かない
 私は飲み会を一次会で切り上げる。
(4)有休の積極的消化
 私は病気になる前に有休をとるように心がけている。
(5)ゆう活の積極的活用
 私は朝型勤務を積極的に利用している。
 もちろん、このような行動は上の方々からの印象は悪いかもしれない。だが、こういう私が一人いることで、他の人たちはより働きやすくなる。たまには定時で帰ってもいいか。困ったことがあったら相談しよう。飲み疲れたから今日は帰ろう。疲れたから休もう。そういう発想が出やすくなるのである。
 今、労働をめぐる価値観は劇的に変わりつつある。それに対応するように、例えば人事課では様々な先駆的な取り組みを行っている。だがいくら人事課が体制を作ったところで、職場の雰囲気がそれを取り入れる方向に向かわなければ職場は変わらない。そこで一人でもいいし末端の職員でもいいから今の時代の価値観を取り入れることが大事である。それが引き金となって、働きやすい職場が少しずつ実現するのである。「あの人もやっているんだから俺もやっていいや」そういう風にして現代の価値観が広がっていけばいい。