社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

上村紀夫『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)

 

 経営サイドから離職を防ぐ方法について書かれた本。社員が求めるものと会社が与えるものの差がマイナス感情を生み出す。社員が求めるものは人によって異なるので、個別の対応が必要。マイナス感情の発生対象には、心身コンディション・働きやすさ・働き甲斐の三つがある。この3要素は人が活き活き働けるかどうかを決めている。この3要素は互いに連携していて、例えば心身コンディションがぐらつけば働きやすさも働き甲斐もぐらつく。マイナス感情が蓄積し、この3要素のバランスが崩れると離職やメンタル不調が生じ、周囲に伝染していく。自社が求め、大事にしていきたい人材像を明確にし、その人材が働きやすく働き甲斐を持てる職場にすべき。

 本書は組織をむしばむマイナス感情の問題を正面から扱っている。プラス感情を与えるよりもマイナス感情を取り除く方が効果的であるとする点で画期的であるが、それゆえの困難さが付きまとう。すべての社員の不満を取り除くことはできないからターゲットを絞って効果的に不満を取り除くべきとするのはなかなか鋭い。ターゲットごとに対処法が違うのだから、個々別々の柔軟な対応が必要だろう。現在私の職場でもメンタル不調者が生じていて、そのマイナス感情が自分にも伝染しかけている。これを何とか食い止めねばならない。