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重点講義第1講「民事訴訟の目的」

 本論文は、民事訴訟の目的には諸説があるが、特定の説と特定の解釈論などを論理的に結びつけるのは困難であり、あらゆる解釈論などはあらゆる目的論と結びつきうることを示し、目的論を詳細に検討しなくても民事訴訟の研究はできるとする「棚上げ論」を提唱する。

 だが、この論文で言われていることは、民事訴訟の目的を、特定の目的(例えば紛争解決)に限定しようとすることの無意味さであり、民事訴訟法の研究がある漠然とした目的を志向して行われていることを否定するものではない。ただその目的を特定のものとすることは困難であるだけである。民事訴訟の研究を導いている理念は複雑混合していて、それを可視化することの困難さを示しているのだろう。だが、可視化することが困難であっても、民事訴訟の研究の方向を導いている不可視な観念は存在する。