社会科学読書ブログ

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「老人ではなかった。二十五歳を越しただけであった。けれどもやはり老人であった。ふつうの人の一年一年を、この老人はたっぷり三倍三倍にして暮したのである。」(太宰治「逆行」)

 ということは俺はもう90歳ということだ。確かに実年齢以上に歳を食った感じが強いな。

「老人の永い生涯に於いて、嘘でなかったのは、生れたことと、死んだことと、二つであった。死ぬる間際まで嘘を吐いていた。」(同作)

 確かに生きるってことはなんかニセモノになるってことだよな。

「絶対の孤独と一切の懐疑。口に出して言っては汚い!」(同作)

 さすが太宰は本物だよ。絶対の孤独とか一切の懐疑とか、発見して喜んでそればかり騒ぎ立てているうちは幼いのだ。それを口に出すことのいやらしさに鋭く気づいていなければならない。