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入院

 ある女友達が、うつ病で閉鎖病棟に入院する旨の電話をくれた。私と彼女との関係は恋愛関係ではない。私はいつか、夢の中で、家庭教師として彼女を教えている夢を見たことがある。そういう関係だった。彼女は私の10歳年下、文学の関係で知り合った。それに彼女には別に恋人がいた。それでも、定期的に連絡を取り合って、楽しく会話する仲だった。

 彼女は聡明で、早熟な女性だった。趣味は幅広く、情報の摂取量がすごい。今回の入院の報を受けて、私はただ悲しかった。しばらく連絡を取れない悲しさというよりは、結局自分が彼女に何もしてやれなかったという悲しさだった。確かに彼女の病気は器質性で、成育歴に問題があると診断されていたようだ。医者だってどうすることもできなかったのだから、私が何かしてあげられるわけもない。だが、私は、自分の無力さに涙が出た。

 私が彼女と出会ったのは、彼女がまだ19の頃だ。あるとき彼女は言っていた:「現実って悲惨じゃないですか」19歳の少女の言葉だとはとても思えなかった。彼女は私に告白した、自分は子供の頃女子に嫌われていて、いつも男子と遊んでいた。高校の頃は居場所が無くて何度もやめようと思った。私は、入院の旨を告げる彼女に、「きっと良くなるよ」「くれぐれもお大事に」そんな言葉しかかけることができなかった。私は無力だ。泣けてくる。