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社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

イェーリング『権利のための闘争』

法哲学 書籍

権利のための闘争 (岩波文庫)

権利のための闘争 (岩波文庫)


 権利を侵害されたとき、我々はどんなことを感じ、また考えるか? 端的に憤慨する、損害を計算してこれだけ請求できると考える、あるいはこれは法そのものに対する侵害だとして危機意識を感じる、どれかであろう。イェーリングは、人が権利を侵害されたときに倫理的な感情が害されることを重視する。権利の侵害とはまず人格の侵害なのである。そして、人格を侵害された者は、その倫理的感情に基づき、侵害者に対して侵害を回復するように請求することを自らに義務付ける。権利を主張する、権利のために闘争するということは、それゆえ、権利者の人格・倫理的感情によって、権利者自身に課された義務なのである。だから、権利のために闘争することは、単純に権利を主張するということではなく、自分に対する義務を履行することでもあるのだ。

 さらに、とイェーリングは論を進める。権利を主張するということは、その権利を付与している法の存在を確証することである。すなわち、社会秩序を維持することである。権利が主張されなければその権利を付与している法の存在意義はなくなる。社会の安定・秩序を維持するためには、私人による権利のための闘争が絶えず行われなければならない。そして、私人の権利意識が強い国家は、当然他の国家の侵害に対しても強い倫理的な反発意識を抱くから、国家としての強さも備えるのである。だから、私人が権利のために闘争することは、国家の秩序・対外的強度を保つ上で必要であり、国家に対する義務ですらある。

 法は公権力によって一方的に制定されるだけではない。それは私人の権利行使によって絶えず確証され保持されている。法が権利を生み出し、権利が法を維持する、その循環を指摘したところにイェーリングの功績はある。