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ベルクソンと危険・結果無価値

 ベルクソンは、世界は常に新しく創造されていくと考えた。だから、可能性というものは事前的には存在しない。結果が発生して初めて回顧的にあの時可能性があったと判断されるに過ぎない。つまり、実在性が可能性に論理的に先行するのである。世界が常に更新されていくのだから、決定論を前提とした可能性の成立する余地はないのである。

 ベルクソンの立場からは、結果の発生しない危険犯や未遂犯は認められないことになる。危険が発生している段階ではまだ何物も生じていない。事前的な可能性などというものは存在しないからだ。結果が発生して初めて、危険発生の時点で法益侵害の蓋然性があった、と回顧的に判断されるに過ぎない。

 だから、ベルクソン哲学は結果無価値論と親和的だ。行為の段階でその違法性(これには法益侵害の可能性も含まれうる)を云々するのではなく、結果が発生して初めてその違法性を問題にしうる。