写真が健康に結びつくことを論じた先駆的な本。
体の健康のためには食生活と運動に気を配る必要がある。心の健康のためには発症危険要因を減弱させレジリエンスを増強する必要がある。望ましい心の健康のためにはポジティブ心理学が有効であり、感謝、強みを意識、経験を味わう、現在を味わう、瞑想などが有効である。
写真の鑑賞・撮影・選択・展示のいずれも、心と体の健康を高める。写真は運動を伴う行為であるし、そこでは心が整えられ、芸術療法的に心を豊かにする。写真療法(photo therapy)はこれまでも様々に試みられており、自己受容、死や老いの克服、感情の共有、被承認、自尊・自己肯定が導かれるとされている。
本書は類書を見つけることが困難な書物である。写真だけでなく、芸術や趣味が健康に役立つことはよく実感として現れるが、それを理論づけ系統立てて論じるのは難しい。本書は写真についてその健康力を説得的に論じようとしているが、なにぶん先駆的な分野であるために議論が熟していない感じを受ける。だが、これからこの領域は開拓されていくと感じる。とりあえず単著が出ただけでも前進であろう。