教養主義のじっくりとしたリハビリを行い、新たな教養論を期した本。
教養のための教養の時代は終わり、これからは現場に応じて臨機応変に対応していくための現場的教養や、人とのつながりによって連鎖的に知を広げていく対話的教養が求められる。
かつて、教養の土台となったものは主に読書であったが、昨今のメディア状況を鑑みると、読書の位置づけは特権的なものから相対的なものと変わっており、新たな教養の土台が探られている。
現代は「知識蓄積型」から「意見発信型」へと社会の構造が変わっているが、知識は言わば底辺をなすものであり、その広がりがあってこそ意見もより高みを目指せるのである。
本書は、大澤聡が鷲田清一、竹内洋、吉見俊哉と対談している現代の教養論である。鷲田、竹内、吉見はそれぞれに教養について一家言もつ学者たちである。彼ら大家と話すことで、教養について非常に生産的な対話が実現されている。新時代の教養について考えるにあたって、まずはリハビリを。