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東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)

 

 心理療法士の観点からの現代社会への処方箋。現代では、「聞くの不全」が起こっている。社会全体が余裕を失っており、困窮している人たちが声を上げているが一向にそれがきちんと聞かれていない。対話の前提としての「相手の話を聞く」ということができていなくて、それが様々な社会的な分断などを生んでいる。人の話を聞く心の余裕を持つためには、まず自分が他人に話を聞いてもらわないといけない。自分が話を聞いてもらうことによりようやく他人の話を聞く余裕が生まれる。そうして話を聞く循環が生まれることで、社会全体の対話が回復される。

 話し上手は聞き上手というように、聞くことの大事さは人間関係の文脈でもよく言われる。だが、それを社会的な次元で言われると改めてなるほどと思わされる。現代社会ではたくさん困窮している人がいる。その人たちの声を身近な人が聞くということがどれだけ大切であるか改めて思い知った。聞くことによる社会関係資本の形成というのは極めて重要だ。人の話はとりあえず聞く。そのための余裕を持つために、人にも話を聞いてもらう。それが互恵関係となって、社会がよりよくなっていく。