階級社会を是正するための処方箋を提示。
日本は格差社会どころか階級社会になってしまっている。優秀な人間同士が結婚し優秀な子供が生まれる一方、能力のない者同士の子どもは能力がなく育つ。そのようにして生物学的に階級が固定してしまっている。
このような階級社会を是正するために、社会を構成する誰もが能力の多寡にかかわらずお互いの力を出し合い、成果を分かち合うことでたがいに感謝しあう社会を作り出す必要がある。そのような互恵的共同社会を生み出すためには人と人とのつながりを生み出す社会力を強化し、教育する必要がある。
個々人の能力の比べ合いや競い合いではなく、能力の出し合いや寄せ合いをすること。能力主義ではなく、たがいに他社を理解し合い、信頼し合いながら互いに力を合わせて問題解決にあたり、課題の解決を喜びにするように教育の方向性を変える必要がある。
本書は、近代以降自明視されているメリトクラシーに異議を述べるものであり、能力によらない社会による階級社会是正を目指すものである。確かに、日本が階級社会であることはすでに多くの識者から指摘されてきた。それに対する教育による是正ということが語られているが、まだまだ抽象論が多く青写真にとどまる感がある。ただ、多少前進は感じられた。