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竹内悊『生きるための図書館』(岩波新書)

 

生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)

生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書)

 

 私たちは図書館の存在を所与のものとして、本を無償で借りられる便利な場所ぐらいにしか思っていない。だが図書館にも歴史があり、図書館はしかるべき制度に則って運営されているのである。子供に良い本を読ませるために運動した菊池桃子の業績や、社会教育や文化振興を目的とする図書館法の存在。図書館というものは先人たちの努力の成果としてできあがっていて、きちんとした制度によって存在意義が規定されていて、また司書などの職員によって丁寧に運営されているのである。

 竹内悊『生きるための図書館』はそのようにして、図書館情報学入門として、我々に図書館を多角的に見る視座を提供する。図書館はただ本を無償で借りられる場所ではない。そこには「一人一人、みんなの生きる糧を提供する」という崇高な理念があり、そこは数多くの人たちの力によって形成され運営され、例えば災害の際はアーカイブ機能を担ったりもするのである。

 そうすると、私たち図書館利用者も図書館で本を借りる際の意識が変わってこないだろうか。ただ面白そうな本を借りるだけでなく、自分をより高めるために本を借りたり、借りた本を大事に扱ったり、返却期限をできるだけ守るようにしたりと、図書館情報学を学ぶことによって本の借り方、ひいては図書館の利用法がグレードアップしていく。

 本書は図書館情報学入門として、我々の図書館を利用する意識を改善してくれるものである。