社会科学読書ブログ

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中原淳『転職学』(KADOKAWA)

 

  転職を科学的に分析した画期的な本。

 転職のメカニズムは、「D×E>R」であり、DはDissatisfaction(不満)、EはEmployability(転職力)、RはResistance(抵抗感)である。つまり、不満が大きく転職力が大きく、それらが抵抗感を上回るときに転職が起こるのである。

 不満としてはハラスメントや待遇など多岐にわたり、性別によっても重視する不満が違う。だが、転職後の満足感は、不満をより肯定的な動機(キャリアアップなど)へと転換したほうが大きい。転職力には知識・スキル・資格といったステータスとしての転職力と、自己をどれだけ深く正しく認識できるかといったアクションとしての転職力があり、それらを総合して考慮する。抵抗感とは変化することへのためらいであり、配偶者の抵抗であることもある。

 転職した際には、学習棄却(アンラーニング)が必要であり、それまでに学んだことをある程度捨て、新しい環境における新しいルールなどを柔軟に吸収することが転職後の満足度につながる。そして、そのような柔軟性は日頃から学びを行っている人ほど高い。

 さて、我々の世代になると定年70歳と言われており、そうするとやはり一度や二度の転職は避けられないのかもしれない。また、転職でなくとも、大きな組織内での内部異動はときに「転職」と言っていいほどの変化をもたらす。そのような大きな変化をもたらす内部異動に適応するためにもこの転職学の知見は役に立つ。一番大事なのは日頃から学習し、柔軟性を身につけておくことである。柔軟に捨てるものは捨てていかなければならない。