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原田曜平『Z世代』(光文社新書)

 

  Z世代とはおおむね1990年代中ごろ以降に生まれた世代。

 Z世代が注目されるのは、①平成の高齢化によって生まれた高齢者信奉が崩れ、企業やメディアの視線が若者に向けられたこと、②デジタル生活時代のもっとも川上にいる存在として注目されたこと、③新型コロナ時代にデジタル化が加速し、Z世代の社会的プレゼンスが上がったこと、④人材不足により企業はZ世代の確保に躍起になっていること、などによる。

 消費離れと同調圧力によって特徴づけられるゆとり世代に比べて、Z世代は「チル&ミー」により特徴づけられる。少子化による人手不足により、Z世代はまったりと過ごす「チル」という価値観を強く持ち、またスマホ第一世代として発信型SNSを使うことで自己承認欲求と発信欲求を強く持つようになった。

 本書は、「最近の若者」であるZ世代を徹底的に分析した好著である。現代の若者の特徴を的確にとらえ、Z世代の心をつかむやり方についても書いてある。変化が激しく価値観が流動的・多様的である現代において、その先端を行く若者の価値観を知っておくのは重要である。なぜなら時代の価値観を最も体現しているのが若者だからだ。若者について知ることにより、職場や家庭でのジェネレーションギャップが無駄に生じるのを回避し、若者とうまく付き合うことができる。上からの価値観の押しつけは絶対にやってはいけないことである。若者に寄り添い、ともに時代を作っていく気概が必要であろう。