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青木栄一『文部科学省』(中公新書)

 

 文部科学省の実態に迫った本。文部科学省は背後にいる官邸、政治家、他省庁、財界からの圧力に弱く、他方で教育界や国立大学には強い立場にある。外に弱く内に強いのが文部科学省である。だから外圧により「間接統治」され、そして内部には強いため外界の要望が教育界で実現されようとする。教育分野の市場開放、企業への外部委託などによる改革は財界や政治家からの圧力である。文部科学省はもっと財源を要求し、教育にお金をかけることが求められる。また、人員確保の必要性についても、もっと社会にアピールすべきだ。そして政治から逃げず戦うことが求められる。

 本書は文部科学省の構成や来歴、そこでの官僚の立ち位置などについて述べた後、教育改革の挫折などの問題点に踏み込んでいる。確かに、「ゆとり教育」の失敗、「高大接続」の挫折など、文部科学省は失態を繰り返している。その原因としては本書にあるように文部科学省が財界などから翻弄されているという現実があると思う。文部科学省は受動的なのだ。確かに霞が関最小規模でマンパワーが少ないのかもしれない。だが、もっと強気に政府にも外界にも自らの立ち位置を主張していくことが必要だ。それが結局より良い教育につながっていくのではないだろうか。