社会科学読書ブログ

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矢野・佐々木『絵本のなかの動物はなぜ一列に歩いているのか』(勁草書房)

 絵本に対する画期的な洞察を示す良書。空間構成のプロセスから考えたとき、絵本は、絵や文によって関係が集積して積み重なり、そのはてにその関係の積み重なりが解体され、再び元の状態に戻る「均衡回復型」の絵本と、均衡が回復されない絵本に分類される。均衡回復型の絵本は、有用性の世界であり人間の世界である「こちらの世界」と溶解体験の世界であり非人間の世界である「あちらの世界」を往復するカタルシスを伴う絵本であり、絵本の基本構造となっている。

 子育てに伴い絵本を読む機会が非常に多いが、その絵本の世界をここまで分析して理論化してもらうととてもすっきりする。これまでになかった枠組みで絵本を解読する試みであり、読んでいてとてもエキサイティングだった。これから絵本の読み方が変わってきそうである。