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資源

 国を動かすには、人とモノとカネと情報が必要だ。国家がそれらを調達する際、国民の意思に基づかずに権力的に調達することがある。人については、選挙や試験によって調達され、これは立候補や志願による国民の意思に国が応えるという形であり、権力性は弱い。だが、モノやカネや情報については、権力的に調達されることがある。たとえばモノとしては土地収用、カネとしては収税、情報としては国勢調査である。

 財産の収用については、29条3項、収税については84条が規定している。情報の調達については憲法に特に規定はない。84条の租税法律主義は、収税の権力性を補完するものだと思われる。個々人から税金を収用する場合、個々人の同意を要しない。だが、法律によって個々人があらかじめ収税に同意しているものだとみなすことができるのである。租税法律主義の趣旨というものは、収税される個人の同意のけんけつを、あらかじめ定めた法律によって補完することにあるのだと思われる。

 この点、私有財産の収用については法律で定める旨の憲法規定はない。これは、私有財産の収用がすべての国民について問題となるものではないため、一般性がないので、法律よりも行政処分に適するからだと思われる。だが、収用される個々人の同意のけんけつを埋めるために、何らかの立法手当てが必要なはずである。土地収用法はその目的を達しているだろうか。あるいは、29条3項によって国民の同意は擬制されるのだろうか。

 国の運営に情報は不可欠だ。情報の調達、情報の収用という問題があり、これは国民のプライヴァシー権とトレードオフの関係になっている。情報の調達についても、その国家運営上の重要性に鑑み、憲法になんらかの規定をするべきではないのだろうか。