丸山眞男がどのような環境で育ち、どんな教育を受け、戦争や国家権力とどのように関わり、誰からどのような影響を受け、何を批判しようとしたか、そんなこんなで彼の全貌が大雑把にわかる本。
丸山は天皇制、そしてそれを軸とする國体思想を批判し続けたし、マルクス主義を批判し続けた。そこには、戦争体験や逮捕歴などの直接的な体験が反映していただろうし、それにもまして、近代化の波に飲み込まれながら本質的には前近代的である日本の在り方そのものへの絶えざる批判精神が働いていた。
丸山が望んでいたのは、日本人が個人として自立し、他者とのコミュニケーションを真摯に続けていくことである。日本人が安易なナショナリズムに陥らず、アマチュアとしての一般人として絶えず政治を監視し続けることである。もちろん一般人は政治に生活を捧げる必要はないが、地域や小集団など多層な討議の空間で政治感覚を養う必要がある。
丸山の人柄が伝わってくるような心のこもった評伝であると同時に、彼の生き様がよくわかり、かつ彼の思想の本質的なところも説明してくれるので、けっこう満足できる本だった。彼の著作をもっと読みたいと思った。