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利益による分類

 それぞれの法律には達成すべき目的・利益というものがあると思われる。そもそも立法することに利益がなければ立法はしないはずである。どのような利益を実現すべく作られたのかは、目的規定に明らかにされている場合もあるが、そうでない場合もある。例えば刑事訴訟法は、1条によれば、公共の福祉、基本的人権の保障、実体的真実の発見、刑罰法令の適正迅速な適用実現、という利益を達成すべく作られている。もちろん、法律が達成すべき利益は互いに衝突することもある。刑事訴訟法だったら、基本的人権の保障と実体的真実の発見はトレードオフの関係にある。

 ここで私が提案したいのは、およそ法律が達成しようとしている利益を列挙し類型化してみて、問題となっている法律はどの類型の利益を実現しようとしているのかを再確認することだ。そのことによって、様々な法律の、その達成すべき利益に関しての類似性や相違性が明らかになり、法律を再分類することが可能になると思われる。

 同じことは、それぞれの条文にも言える。例えば定義規定は、用語の意味を明確にしひいては法律の適用を明確にし、また同じ内容には特定の用語をあてることで法律を簡潔化する、そのような利益を実現する。それぞれの条文がいったいどのような利益を実現しようとしているのかを確認し、実現しようとする利益によって条文を再分類する。

 以上の作業によって、法律と条文を新たに体系化することが可能なような気がする。