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訴えの利益と当事者適格

 訴えの利益と当事者適格は、それほど判然と区別できないのではないか。訴えの利益は、権利保護の資格(法律上の争訟であって一般的に本案判決による処理に適する)、権利保護の利益(具体的に本案判決を求める現実の必要性・実効性)により構成される。当事者適格は、訴訟物の内容をなす権利・法律関係の存否につき、法律上の利害の対立する者に認められる。

 訴えの利益、権利保護の利益があるというためには、つまり本案判決を求める必要性・実効性が認められるためには、争訟の当事者が法律関係について対立している必要がある。つまり当事者適格が認められる必要があるのである。一方で、当事者適格がある、つまり当事者が訴訟物の内容について利害が対立するためには、その訴訟物について本案判決をする必要性・実効性が必要である。つまり、訴えの利益が認められる前提として当事者適格の存在があり、当事者適格が認められる前提として訴えの利益の存在があるのではなかろうか。

 たとえば、買主の売主に対する所有権確認訴訟だったら、対立当事者間の争いだからこそ訴えの利益(必要性・実効性)があるわけだし、訴えの利益があるような訴訟物だからこそ、それを争う当事者には訴訟当事者としての資格があるのではないか。