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裁量権の逸脱・濫用

 行政庁に裁量が認められたとしても、その判断が全く事実の基礎を欠き、社会通念上著しく妥当でないことが明白な場合は裁量権の逸脱・濫用とされ、行政行為は違法性を帯びる。だがここで会社法の経営判断原則を思い起こそう。取締役の裁量は、(1)合理的調査、(2)合理的判断、この両方を満たさないと任務懈怠責任が発生するのだった。ところが、行政法の判例を見ていると、もっぱら、考慮すべきでない事実を考慮したとか判断面で裁量統制をおこなっており、調査面では裁量統制をおこなっていないではないか。行政庁の裁量権の逸脱・濫用を判断するにあたっても、まず行政庁が合理的な調査をして資料を十分集めたうえで判断したのか、その判断の前提となる調査の段階でも妥当性を考えなければならないはずではないか。