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行為と情報

 行為をするためには情報を得なければならない。情報は、(1)物事の存在、(2)物事の内容、から構成されるが、これらは不可分であろう。

 さて、法システムの様々な場面で、(1)情報提供行為、(2)情報に基づいた行為、がなされるわけだが、それぞれについて権利性・義務性が付着する場合が多い。

(1)情報提供者に情報提供の権利があり、それに基づいて行為する者にも行為の権利がある場合。これは、私的な契約の締結の場面で見られる。申し込みと承諾というものである。申し込む者は、経済的自由権に基づいて権利として情報提供する。それに対して、承諾者も、経済的自由権に基づいて、自分の利益を目指して承諾し、そこで契約が成立する。

(2)情報提供者に情報提供の権利があるが、それに基づいて行為する者には行為の義務がある場合。これは、裁判所の被告に対する訴状の送達や呼び出しの場面で見られる。裁判所は、訴えが提起されていることを、自らの権限に基づいて被告に情報提供し、被告はそれに応訴する義務がある。

(3)情報提供者に情報提供の義務があるが、それに基づいて行為する者には行為の権利がある場合。これは会社法においてよく見られるパターンであり、例えば資本金の額の減少について、会社法449条2項は、会社が資本金を減少する場合には、会社は会社債権者に対してその内容(情報)を提供しなければならない。その情報提供に基づいて、会社債権者は、同条1項によって、権利として異議を述べることができる。

(4)情報提供者に情報提供の義務があり、それに基づいて行為するものにも行為の義務がある場合。これは行政法の領域においてよく見られるパターンである。ある業者などが営業許可を求めるためにその営業の内容(情報)を提供する義務があり、それに対して行政庁はその許可を認めるかどうか適正に判断する義務がある。