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砂田一郎『オバマは何を変えるか』(岩波新書)

 

オバマは何を変えるか (岩波新書)

オバマは何を変えるか (岩波新書)

 

  2009年10月、オバマ前アメリカ大統領のノーベル平和賞受賞を受けて書かれたオバマの改革への挑戦の記録。

 オバマブッシュ政権外交政策から転換し、アメリカが平和と尊厳を主導する役割を担うとした。また、アメリカの多様性を強みだととらえ、国民自らの公的責任を強調した。人工妊娠中絶については女性の選択する権利を擁護し、温室効果ガス削減など新たな環境政策を提言した。景気対策に関しては公共事業を重視し、住宅ローンと自動車産業に援助の手を差し伸べた。また、国民には貯蓄をするように奨励した。

 オバマは、アメリカは単独行動主義をやめ、世界と協調しながら平和を実現することを提言した。イスラム諸国とは対話を試み、核兵器を縮減していこうとした。また、オバマの重要な施策としては医療保険改革と新たな環境エネルギー政策によるアメリカの変革があった。国民皆保険制度と再生可能エネルギーへの転換である。

 本書は2009年時点のオバマの施策に関する本であり、オバマ政権が終了した今となってはその総決算を読みたいところではある。だが、オバマがいかに革新的でチャレンジングな政治を志していたか十分伝わってくるものであり、偉大な政治家の奮闘の記録として興味深かった。