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望月優大『ふたつの日本』(講談社現代新書)

 

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)

ふたつの日本 「移民国家」の建前と現実 (講談社現代新書)

 

  最近コンビニや飲み屋などで外国人労働者をよく見かけるようになった。日本への移民は確実に増えており、それは我々の目に見えるようになっている。望月優大『ふたつの日本』(講談社現代新書)によると、日本には現在260万人程度の外国人がおり、日本の総人口の2%程度を占めている。そして日本人の人口減少及び移民の増加に伴い、外国人の割合は増えていく見込みである。外国人が5%を占める時代もそう遠くはない。

 これまで日本は海に囲まれた島国で、アイヌなどを除くほかは日本民族という単一民族によってできあがっている均質な「一つの日本」であると思われていた。だが今や事情は大きく異なっている。永住者が増えているということもあるが、これから「特定技能」という在留資格ができて、人手不足の業種に対する幅広い人材供給が可能になる。日本は現実的に人種的な多様性の時代に突入しているのである。中国、韓国、ブラジル、フィリピン、ネパールなどからの移民が日本社会を構成する一員として現実に労働している。

 だが、ここまで増えてきている外国人を日本人は日本社会の中に包摂することがまだできているようには思えない。外国人は外国人同士の狭いコミュニティに閉じ込められており、日本人との接触があまりないのが現実である。日本はもう均質な国ではないにもかかわらず、その多様性を多様性のまま受け入れることができず、疑似的な均質性を固持している。最近の技能実習生の待遇の悪さといった問題も、技能実習生を日本人社会から排除しているところにその問題の原因があると思われる。日本人はまだ移民と適切な関係が築けていないのだ。これだけ増えてきた外国人移民を日本社会へ溶け込ませて過ごしやすくさせること、社会的包摂が求められる。