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離席のススメ

 職場で仕事をしていても、人間の集中力などしょせん限界がある。ものの本によると人間の集中力は15分単位でしか持続しないらしい。深い集中力は15分が限度で、15分単位で集中ができるとのこと。これは私も仕事をしていて実感するところで、だいたい30分くらい集中して仕事をすると集中力が途切れることを感じる。

 集中力が途切れた時、そのままダラダラと仕事をしようとしても質のいい労働はできない。そういう場合はいったん集中力をリセットするために離席するといい。離席はこのような集中力のリセットという効果があるが、それ以上に重要な健康上の効果がある。

 イギリスでは座りすぎについてガイドラインを作っていて、就業中に少なくとも2時間は立ったり歩いたりする時間を作るべきとしている。座りすぎは肥満・糖尿病・高血圧・脳梗塞・がんのリスクを高めることが研究によって明らかになっているからだ。

 就業中に離席が多いと仕事を怠けていると思う人もいるようだが、集中力のリセットや病気のリスクの低減のために離席は必要だということを理解した方がいい。長期的に見て、30分ごとや1時間ごとの離席は従業員にとって業績上・健康上の利益をもたらす。もちろん、離席しておしゃべりしたりして単純に怠ける従業員は問題である。だが、集中力のリセットや健康の維持のため離席することはむしろ奨励すべきである。

 それだけではない。例えばADHDの人などは離席が多いだろうし、頻尿の人も離席は多いだろう。そういう人に怠慢のレッテルを張るのはあまりにも酷だ。従業員それぞれの事情を考慮して個々別々の対応をするべきである。

 いずれにせよ、労働の現場においては些細なことまで規律するのは好ましくない。些細なところまで監視されていると思うと従業員は窮屈に感じ、むしろ仕事の効率は下がっていくだろう。それよりも従業員それぞれの個性や考え方、働き方の多様性を重んじて、一律に規制することはやめた方がいいと思う。