社会科学読書ブログ

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東畑開人『居るのはつらいよ』(医学書院)

 

 デイケア施設のフィールドワーク。単なる就労記や体験記と異なるのは、著者が批評的視座を持つ理論的知性であり、現場で実際に働くことにより、その現場を理論的に把握していくからだ。批評的知性が現場に入り込むということは、現場をこのように発信することや、現場を理論的に理解する、また批評的知性自身が現場から大いに学ぶという意味で大きな意義を持つ。

 インテリの社会参加などがかつて叫ばれたが、インテリこそ象牙の塔にこもっていないで現場へ繰り出すべきなのだ。それはインテリにとって強烈な刺激になり、インテリの大きな成長をもたらし、またインテリがその現場を批評的に記述することで現場の豊饒化ももたらす。理論をよく知る人間こそ、その理論が適用される現場で理論の有効性や無効性を確かめることができるのである。批評的知性が現場に入り込むことによる場の豊饒化という良い側面を見ることができる本である。