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育てることで育つ

 娘が産まれてから間もなく300日が経とうとしている。私はこれまで育児に携わってきたわけだが、まさに娘を育てることにより私自身も育っていると思う。

 まずは人生の豊饒化である。一つには自らの血を引いた人間が一人生まれ出たということにかかわる喜びなどの複合的な感情。また一つには日々の子どもとの触れ合いがもたらす喜びや大変さなど。そして何よりも人生にまた一つ「育児」という窓が開かれ、この領域が非常に豊穣であるということ。

 育児という窓が開かれることで、私は全く新しい経験をした。それはケアの経験である。私はこれまで事務職を生業としており、介護職などを経験したことがなかった。それがいきなり子の介護というケアの仕事をやらなければいけなくなったのである。育児というケアには膨大な知識と経験が必要である。本や雑誌、インターネットなどで育児情報を得て、実際に子と触れ合うことで経験値を積み、育児というスキルをだいぶ身につけた。このスキルアップにより育てられたことは大きい。

 それだけではない。育児は相手のあるものだし、しかも常に助けが必要な相手であることから、必要な時にはどんなに疲れていても、どんなに眠くてもケアしなければならない。この理不尽さに耐えること。これは一種災害とか社会とかの理不尽さに耐えることに似ている。育児をすると忍耐力が鍛えられるのである。

 また、育児と仕事の両立といったもの。私は毎日定時で帰っているが、その分朝頭早く出勤し脳が活発に働いているうちから仕事を効率よく済ませるように努めるようになった。定時で帰らなければいけないからこそ、無駄な仕事はやらない、仕事に優先順位を付けるなど、いろいろな段取りを取るようになった。また、育児によって常に心身に負荷がかかっているため、リフレッシュをしっかりすることを心がけるようになった。上手に休むことがすごく大事だ。

 そして、何より妻との協力体制が強固になったこと。また、協力して物事を行うことが上手になったこと。妻は育児の負担を多く担っているので、妻が食事をしたり身支度をしたりするとき、一休みしたい時などは私が子供を見たりする。また、育児の方針ややり方について常々妻と話し合い、よりよい方向を模索してきた。

 育児をすることで、私は人生の新たな窓が開かれ、ケアという新たなスキルを手に入れ、忍耐力が鍛えられ、仕事の効率が上がり、協力することがうまくなった。育てることで確実に育てられている。