アメリカ黒人の歴史についての標準的な教科書。
黒人は奴隷貿易によってアフリカから過酷な状況のもとアメリカに連れてこられた。奴隷制度は次第に法律によって定められるようになり、独立戦争でも黒人が活躍したにもかかわらず、独立憲法には奴隷制度が明定されてしまった。奴隷たちは主に南部の綿花プランテーションで過酷な労働にさらされた。
そんな中で、奴隷制廃止運動(アボリショニズム)も高まりを見せる。雑誌や組織活動を通じて活動するものが多かった。中には自由黒人という、自由を買い戻したり何らかの理由で解放されたり逃亡したりして奴隷でなくなっていた黒人もいて、運動に加担した。結局南北戦争のときの奴隷解放令によって奴隷は解放された。
だが、奴隷解放令があっても以前黒人は差別され続けた。黒人たちは地位向上のため運動を続け、特に公民権獲得のための運動をした。バスや劇場や学校などで差別されないよう求めた。黒人たちは非暴力で活動を進め、バスボイコットやシットインなどで自分たちの権利を主張した。状況を見たケネディは新公民権法案を議会に提出し、次のジョンソンのときに1964年公民権法が成立し、選挙の際の平等や公共施設・公共交通機関における平等、公教育における平等が定められた。
いきなり読むとあまり頭に内容が入ってこない本かもしれない。そのくらい教科書的に淡々と書かれた本である。私の場合はキング牧師やマルコムXのことを知っていたのでだいぶ理解は早まったが、何らかの具体的な知識があるとイメージしやすいかもしれない。いずれにせよ、奴隷制度は重大な人権問題であったわけであり、それは人種問題ということでいまだに普遍性をもつ課題である。これから移民が増えてくる日本でも気をつけねばならない。