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國分・山崎『僕らの社会主義』(ちくま新書)

 

僕らの社会主義 (ちくま新書 1265)

僕らの社会主義 (ちくま新書 1265)

 

  哲学者の國分功一郎とコミュニティデザイナーの山崎亮が初期社会主義について対談したもの。

 ラスキン、モリス、オウエンらの初期社会主義者たちは、労働者の権利が確立しておらず貧困が深刻だった時代背景で彼らの主張を展開した。現在もまた彼らの時代のように労働者が困窮しているため、彼らの思想から現代の我々は学ぶものが多い。

 彼らマイルド・ソーシャリストは労働者住宅を作ったり生活協同組合を作ったりした。また、装飾を重視し、労働を楽しみのあるものとして考えていた。芸術作品があふれかえることで街に様々な文脈が生まれることを良しとしていた。彼らの思想から学び取れるのは、「誰しもがディーセントな暮らしのできるフェアな社会」の建設である。働き甲斐のある人間らしい仕事をして均等に暮らせる社会が求められる。

 本書はマルクスらが空想的社会主義者として排斥した初期の社会主義者をもう一度見直そうという趣旨の対談であり、確かに初期の社会主義者の主張は現代では受け入れられないものも多数あるが、現代に生きるものも多数ある。実際に社会問題が深刻だったときに生まれた思想が、同じように社会問題が深刻となっている現代に生きるのは当然かもしれない。大変刺激的だった。