社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

建築著作物

 2条1項15号ロによると、建築に関する図面に従って建築物を完成することは、建築の著作物の複製に該当する。たとえもとの建築物が存在しなくても、図面によって建築物を完成すれば複製権侵害となる。

 でもこれっておかしくないだろうか。複製権を含む著作権は、17条により著作者に帰属する。2条1項2号より、著作者とは著作物を創作する者である。建築がまだ完成していない段階では、まだ建築の著作物は創作されていず、図面を書いただけの人間は建築の著作者にはなっていないので、その建築について著作権を得ることもないはずである。著作権を得ていない者は当然複製権を持たないから、仮に図面に従って建築を完成させたものがいてそれが複製にあたったとしても、図面を書いただけの人間の複製権を侵害することにはならないはずである。

 条文の論理だと、まだ現像されていない写真のネガを、撮影者以外の者が現像したときも、撮影者の複製権侵害となりそうである。だが、現像されていない以上は写真の著作物はまだ創作されていないのであり、撮影者に著作権・複製権は帰属しないはずである。