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地方自治体

 会社、地方自治体、国家という三つの集団を比べてみると、地方自治体を特徴づけているのはその地理性(空間性・物理性)だと思う。地方自治体は成り立ちにおいて会社と区別され、その機能において国家と区別される。

 会社は特定の目的の実現のために人々や資源が集まったものである。その成り立ちは目的に依存している。それに対して、地方自治体や国家は、地縁的集団である。つまり、人間が生きていく上ではどこかの空間を占めなければならないが、その空間が接近している人間たちの集まった集団である。会社が成り立ちにおいて目的志向であるのに対し、地方自治体と国家は成り立ちにおいて地縁的である。

 もちろん、成り立ちが目的志向であれ地縁的であれ、それぞれの集団にはそれぞれの利害が発生し、構成員に共通の利害についてはその集団が自律的に決定するのが妥当である。地方自治体においては、地方自治の本旨がその自律的決定を要請する。だが地方自治体の決定する事項は、その地方の利害状況に合わせたものであり、地方自治体の決定は地縁的な利害に依存している。それに対して、国家の決定する事項は、それぞれの地方の特殊性を捨象したより一般的な事項である。地方自治体の決定事項が地理的であるのに対し、国家の決定事項はより普遍的である。

 国家というと何か抽象的なものをイメージしがちである。だが、本当は物理的には日本列島の形をしている。地方自治体と言うとまずその位置や形をイメージする。それは、地方自治体が、成り立ちと機能において地理的であるからだ。