COMLという民間団体で活躍している著者が、自らの経験とCOMLでの活動についてまとめている本。
1990年代当時、いまだ病院と患者は対等ではなかった。情報の非対称性が歴然とあり、病院の側は患者の情報を入手しても患者には公開せず、治療方針などについても十分患者に説明することはなかった。
そこで登場したのがCOMLであり、患者の権利を守ろうと活動を始めた。「患者と医師との関係はお任せでも対立でもない」両者の誠実な話し合いが必要なのだ。COMLは「いのちの主人公は自分自身」と患者の意識を高め、そうしているうちに医療をめぐる状況は改善していった。
COMLは患者からの電話相談を受ける。また、「医者にかかる10箇条」として医者にかかる際の心構えを示し、賢い患者になる手助けをする。また、模擬患者の育成をし、初期研修医の成長の手助けをし、病院探検隊を派遣し病院に様々な改善点を伝える。
本書は、医療関係のあるNPOの理事長である著者により書かれた、そのNPOの全容である。一貫して患者の権利を守り、そのために患者自身の意識を変えていこうとする試みは素晴らしい。医者と患者の間には、現実的な不平等が今でも横たわっている。その不平等をいかに解消し、患者の側が満足した医療を得られるか。COMLの活動をこれからも応援していきたい。