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ミルチャ・エリアーデ『聖と俗』(法政大学出版局)

 

  宗教とは何か、という本質的な問題に取り組んだ本。

 聖なるものは俗なるものとは異なった神秘的なものとして顕れる。これを聖体示現という。全くの他者、この世ならざる一つの実在がこの自然の俗なる世界に現れるのである。聖なるものとは力であり、実在そのものである。

 宗教的人間にとって空間は均質ではない。聖なる空間と俗なる空間に分かれる。聖なる空間は秩序だっており、宇宙の中心であり、人々は住居や神殿を構えるごとに聖なる空間を作り出してきた。

 宗教的人間にとって時間も均質ではない。聖なる時の期間、祭りの時がある一方、俗なる時間もある。聖なる時間は永遠の現在であり、何度も繰り返されるものである。

 本書は著名な宗教学者であるエリアーデが宗教の本質に迫ったもので、多数の具体例を挙げながら宗教とはどういうものかについて解説がなされている。いわば宗教の普遍理論であり、特定の宗教に偏ったものではない。宗教哲学の基本書であろう。