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宮川努『生産性とは何か』(ちくま新書)

 

生産性とは何か (ちくま新書)

生産性とは何か (ちくま新書)

 

  生産性を向上させる方法について経済学的観点から論述した本。

 生産性とは、投入された全要素に対してどれだけ生産が行われたか、また付加価値を生み出しているかによってはかられる。製造業は比較的生産性が高いが、サービス業は生産性が低い。現代、産業構造が製造業からサービス業へと移行する中で生産性の低下が生じたが、IT革命によってアメリカを中心にサービス業の生産性も向上している。

 知識資産や社会資本整備、つまりノウハウや公共投資は、現代産業のインフラ整備となり、他産業へと利益が波及するスピルオーバー効果を持ち生産性が高い。また、非効率な企業が撤退したり新規起業が盛んであったりして産業の新陳代謝が活発だと生産性が上がる。古い考えにとらわれず考えを新しく改め、競争性・合理性・多様性を高めることが国の生産性を高める。

 本書は経済学者による主に日本の生産性の分析であり、日本の生産性の低さが注目されている昨今、いかにして生産性を高めたらよいか経済学的に処方箋を提示している本である。漠然と生産性と唱えるのではなく、生産性を厳密に定義したうえ科学的・説得的に議論がなされているので、とても参考になる。いろんな方にお薦めしたい。