社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

中原淳『経営学習論』(東京大学出版会)

 

経営学習論: 人材育成を科学する

経営学習論: 人材育成を科学する

 

  企業・組織に関係する人々の学習を扱う経営学習論の概説書。

 経営学習は、①組織社会化、②経験学習、③職場学習、④組織再社会化、⑤越境学習の観点から語ることができる。①組織社会化とは、ある個人が組織に外部から参入するとき、組織がその個人を組織目標に合致させようとすることである。②経験学習とは、具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験のサイクルを回すことによる学習である。③職場学習とはOJT、OFF-JTなどによる職場内での学習のことである。④組織再社会化とは、中途採用者がそれまでの経験を棄却したりして新しい組織に適応する社会化のことである。⑤越境学習とは職場の枠を超えて様々なイベントやワークショップに参加して学習することである。本書ではそれぞれの学習においてどのような契機が有効であるか詳細に分析されている。

 企業や組織で労働するということは必然的に学習を伴うということは多くの人が実感していることであろう。本書はそのような学習について多角的かつ科学的に論じた読みごたえのある研究であり、企業や組織で生きる人間にとって得るものの多いものだと思う。最終章でこれからのグローバル社会における課題にも触れられていて、経営学習論の射程の広さを感じた。