イギリスのEU離脱の経緯とそれが周囲に与える影響について論述している。ヨーロッパにおいてEUはリベラルの立場に立つものである。イギリスがEUに加盟することはイギリスがリベラル陣営に取り込まれることであった。それに対してイギリス内部では「主権の奪還」を唱えてポピュリズム的にEUからの離脱を掲げる人々が増えていった。結局国民投票でイギリスは僅差でEU離脱することになったが、イギリスはEUを離脱することによってEUを介した影響力を失い、北アイルランド問題やスコットランド独立問題などを抱え、かえってイギリスの危機は増したといえる。それだけではなく、イギリスのEU離脱は世界全体が分裂と分断に向かっていることの象徴的出来事であった。
本書はブレグジットの経緯を細かく記述すると同時に、そのイギリスに与える影響、EUに与える影響、世界に与える影響などについて論じている。最近のポピュリズムの台頭には危機感を抱いている人が多いと思うが、それも世界中の人たちが何らかのよりどころを回復しようとしている兆候なのだと思う。イギリスは主権を取り戻そうとすることによりかえって世界への影響力を失ってしまった。ポピュリズムにはどこか合理性や論理性、長期的見通しの乏しさがある。我々もイギリスの失敗から学ばなければならない。