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大谷基道『東京事務所の政治学』(勁草書房)

 

東京事務所の政治学: 都道府県からみた中央地方関係
 

  すべての都道府県が東京に「東京事務所」を置いている。その実態に迫った本。

 東京事務所の活動は、①中央省庁からの指示・伝達事項を都道府県に伝えること、②中央省庁の情報を入手して都道府県に伝達すること、③都道府県の現場の情報を中央省庁に伝えること、④都道府県の要求を中央省庁に伝えること、が中心である。東京事務所職員はこのような活動をするため、自県の出身者、自県への出向経験者を通じて中央省庁にアクセスしており、そのような関係を維持するため日ごろから顔つなぎをしている。

 そして、東京事務所は互いに競合関係にあるが、情報収集活動における互いの弱点を補うため、必要に応じて連携しており、東京事務所間の連携組織が次々と出来上がっている。東京事務所が入手しようとしている情報は「不確実性の低減」を目的としており、すべての都道府県が東京事務所を置いているのは社会的な同型化の産物である。

 中央地方関係において、かつて東京事務所は官官接待などを行ったり情報収集活動や陳情活動に熱心だった。官官接待が叩かれ、情報技術が発達しても今なお東京に事務所を置いて活動する必要性はあるようである。東京事務所は地元の物産品のPRがメインなのかと思っていたが、本来の活動はかなり政治的なものであった。