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運も実力のうち

 「運も実力のうち」というと、予期せぬ幸運が降ってきて戸惑っている人に、周りの人が冗談半分にかける言葉、というイメージがある。だが、「運も実力のうち」というのは意味が形骸化したイディオムではなく、事実を指示している言葉のように思える。

 「結婚したいなー」とことあるごとにつぶやいている人がいるとする。だが、その人がもし運命の人が目の前に現れて自動的に恋愛が始まると考えているのならば、それはほとんど実現しないであろう。「結婚したいなー」と言っている人が、地道にダイエットをしたり、婚活アプリに登録したり、結婚する可能性を高める行動を現実に行っているのならば、結婚は実現するかもしれない。その際、結婚は幸運として訪れるかもしれないが、その幸運が訪れる可能性を高めたのは本人なのである。

 運とは望ましい結果である。実力とは運を実現するために布石を敷いたり伏線を張ったりする能力のことである。結果は必ずやってくるとは限らない。だが、結果が生じる可能性を高める行為は無数に存在する。結果が生じる可能性を高める行為を継続的に行える能力、それこそが実力なのだ。

 だから、「運も実力のうち」とは、幸運をもたらすのは日頃の地道な結果到来の可能性を高める行為を続ける実力である、ということを意味しているのだ。