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水越康介『応援消費』(岩波新書)

 

 近頃話題になっている応援消費についてコンパクトにまとめた本。応援消費とは、災害を受けた土地の商品を買うとか、好きなアーティストなどの作品を買うとか、ふるさと納税など、お金を出すことによって利他的な行動をしようとすることである。これらは本来贈与の形態をとっていたり、エコ消費やエシカル消費のような倫理的なものであったりして、経済とはなじまないものであったはずである。だが、家族や政治や学問もまた経済現象として分析されていくのと同期して、このような応援活動も経済や消費行動に組み込まれていく。

 本書は、応援消費という新しい現象について、それがはらむ矛盾とともに概略を解説している。新自由主義経済の下、ほぼあらゆるものが経済に組み込まれていく中、このような倫理的行為もまた経済に組み込まれていく過程を描いている。贈与というものが純粋な形でありうるのかという根本問題を扱っていてなかなか本質的なところにアプローチしていると感じた。