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秦正樹『陰謀論』(中公新書)

 

 陰謀論とは、「重要な出来事の裏では一般人には見えない力がうごめいている」とする信念である。陰謀論についてはそれがSNSで拡散されるとする「SNS悪玉論」があるが、データを分析してみるとSNS陰謀論の関係はSNSによって様々であった。中でも悪玉とされるツイッターはむしろ陰謀論との相関関係が低い。ネット右翼陰謀論の結びつきはわかりやすいが、リベラル左翼もそれなりに陰謀論を持っていることが明らかとなった。要は自らの信念と整合的な陰謀論を信ずる傾向があるということである。また、政治に詳しいほど逆に陰謀論との相関関係が高くなることも明らかになる。

 本書はデータ分析を駆使して、陰謀論が何との結びつきが強いかを示している。結果は意外なもので、ツイッター陰謀論との関係の低さ、リベラル左翼と陰謀論の結びつき、政治的知識と陰謀論の結びつきなどが明らかとされている。これから社会をデータ科学で分析していくことは重要なアプローチとなるであろう。本書はその好例であると言える。