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宇佐見英治『石の夢』(筑摩書房)

 宇佐見英治の詩人としての面目躍如たるエッセイ集である。石に対するみずみずしい感性、「石を食べたい」と感じるような飛躍した感性、そこに宇佐見が全き「外部」と接触しまさに「創造」を行っている息吹が感じられる。全体的に知性も優れ感性も優れ、その総合的な表現としてエッセイを書いているわけであるが、やはり詩人としての感性が単なるエッセイストのそれとは異質である。感受性が研ぎ澄まされていて、「外部」が盛んに到来し、詩人でしか感受しえないようなことをたくさん書き連ねている。

 宇佐見は宮沢賢治に私淑していたわけであるが、それこそがまさに賢治の「ほんとうのことば」を受け継ごうとする意思ではなかったのだろうか。「ほんとうのことば」は空から降ってくる。あるいは宙に浮かんでいてそれをつかみ取ってくるものだ。さらには、何もないところに言葉を存在させることである。そんなことを強く感じさせる優れたエッセイ集だ。