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濱口桂一郎『家政婦の歴史』(文春新書)

 家政婦についての労働法上の位置づけの歴史的変遷について書いた本。家政婦の前の時代には女中がいた。女中とは家の一員として家父長の支配下にあり、起きてから寝るまで主人の命令に従って無限定の労働義務が課されていた存在である。この女中については労働基準法になじまないとして適用除外とされていた。だが、暇を持て余した専業主婦が働く場を求めて家事労働をする家政婦は、派出婦会などによりあっせんされていたので、労働基準法が適用されてもよかったはずである。本来なら使用者は派出婦会などのはずが、あくまで使用者は個人家庭とされたため労働基準法が適用されなくなってしまったのである。

 家政婦をめぐってこのように複雑な法的問題が存在するとは知らなかった。なんというか、法的に見て典型的ではなく、どこに当てはめてよいかわからない家政婦のような存在を、立法的にうまく保護することができなかったという経緯がある。今後どのような法的措置がなされるかわからないが、立法的な解決を望むものである。