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論理は一つの正義にすぎない

 論理的であることが過大視される場面が割と多いように思います。論理的であれば絶対正しい、論理は覆せない、そう思っている人もいるかもしれません。ですが、正義というものは論理だけではなくほかにもいろいろあります。効率性や平等性、感情や直観など。我々が何かを決定するとき、それは様々な正義を総合考慮して決定するわけですが、論理はその考慮要素の一つにすぎません。

 例えば、急いでいる仕事なのにいつまでも論理をこねくり回している時間はないですよね。ここでは直観という正義が強く働きます。限られた時間で仕事をこなすためにはもちろん論理的な検討もしますが、あとは自分の直観的な感覚で落としどころを決める。決定というものは常に論理を超越します。そこで働くのが、直観的なものだったりバランス感覚だったり、まあ論理以外の正義が働くのですね。

 例えば、論理的に見れば違法な行為の被害を受けたとする。そのまま論理で突っ走っていけば損害賠償請求訴訟まで行きついてしまいますね。ところがそれはとても効率が悪い。ここでは効率性という正義が強く働きます。ほかに優先すべきことは人生においてたくさんあるかもしれません。だったらわざわざ訴訟を提起せずとも、相手に謝罪を求めるとか、もっとソフトな解決方法にとどめておく。

 論理はもちろん重要です。ですがその重要性は相対的なもので、他にも決定において考慮すべき正義は多数あります。それら多数の正義を総合考慮して、我々は決定を下していくのです。論理は一つの正義にすぎません。